小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

続・狂二 波濤編 3

船首が白波を切り裂いて、進む。 やがて姫路の港が近づいて来た。ここまで来ると、 都会の雑多な、ぬくもりのある風が 不快に、 襲ってくる。 キャビンで舵を操作する秀治までは届かないが、 先頭で、仁王立ちで誘導する サヤカにとって、 この雑多な熱気が…

続・狂二 波濤編 2

カモメが二、三羽 頭上を旋回した。 北風がいつの間にやら西風に変わっていた。 錨を巻き上げ ポイントを移動する。 播磨灘 家島諸島の漁師 秀治は魚群探知機とかの文明の利器を備えず、 己の経験と勘だけで生きてきた。 もっとも“サメ狩り”専門の秀治には魚…

続・狂二 波濤編 1

月明かりが遠くの空で光ってるような、 春と呼ぶにはまだまだ遠すぎる 冬の夜明け前だった。 漁船に ヒョイと飛び乗った秀治は出航前の始業点検を念入りに 済ますと エンジンキーを捻った。 グルン グルルルル。。。。最初は低く重たい唸り声をあげていたヤ…