小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

狂二 Ⅲ 断崖編 その25

2010年3月31日 午前10:10分 探偵事務所所長、佐々木淳一は大阪府警刑事時代から、 初めて訪れる市や町の場合、時間さえ許せばその町の図書館へまず立ち寄るようにしていた。 退職後、探偵仕事で地方都市に行く機会が増え、その習性はかなり役に…

狂二 Ⅲ 断崖編 その24

2010年3月31日 AM6:20 白浜冷凍、事務所のガラス窓を叩きつける雨音で、栗原は目覚めた。 風も強いのか、電線の唸り声も結構大きい。 真っ先に気になったのは、新社長だ。この風雨は凌げているのだろうか・・・ まさか、屋外で野営とかじゃねえ…

狂二 Ⅲ 断崖編 その23

2010年3月30日 21:20 「今日は何日だったっけ、日本時間で」 男が言った 。。。。はてさて、何日だっけ。 浩二もふと考え込んでしまった。 大阪を出るとき、まさかそびえたつ崖に囲まれただけの海辺で 夜を迎えようとは、夢にも思わなかった。 …

狂二 Ⅲ 断崖編 その22

2010 3月30日 18:30 紀伊田辺駅前 雑居ビルの玄関ホール。 男は、古ぼけたエレベータの「呼」ボタンを押した。 手には3軒のコンビニを回り、買い集めた夕刊紙や食料、缶ビールが 入ったレジ袋をぶら下げている。 一応、地味な灰色のスーツに紺…