小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その4

1980年・・・当時すでに”地球温暖化”の文字がマスコミを賑わせていたかどうかは思い出せない。が暑い日々が続いた事だけは覚えている。6月に入るや真夏を思わせる気温の連続で、昼間の外回りは厳しいものがあった。エアコンの効いた建物や電車に乗ると…

ミモザの咲く頃 その3

「では説明させていただきます」 と言って、少女は脚を組んだ。 なんと、目の前のまだ子供のような少女が説明を始めようとした。すらりと長い手足。背丈こそはそこそこにあるようだが、あどけなさの残る顔は見ようによれば小学生にも見える。 「あの。お嬢ち…

ミモザの咲く頃に その2

「来週からワシと一緒にピアノ教室に入って欲しい」 「あのう、俺、あ、僕、あ、いえ私 音楽は全くの音痴です」 「承知している。だから君を選んだ」 ・・・・・・ 船場商事株式会社 第一営業部第三課新人 森野彰(あきら)は昨日、国光常務に呼び出された時…

ミモザの咲く頃に その1

つかのまの春とともに しぼんだばらを惜しむまい 山のふもとの風かげに 実るぶどうの房もすてがたい。 草深きわが谷合(たにあい)の飾り物 こがねにかがやく秋のよろこび それは乙女の指のように ほっそりとしてけがれもない。 /岩波文庫 プーシキン詩集 …