小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その13

「じゃが、倍の二億リラや。我が社の誠意を奴らに提示する」 常務の言葉に三度(みたび)どよめきが起こった。 「あのう、常務いいですか」 川村が手を上げた。「いきなり倍額だなんて、それはどうかと。本当に提示して頂ければおそらくジャンニ側との契約は…

ミモザの咲く頃に その12

週が明けた。 平年に比べ梅雨入りが大幅に遅れていたが、とうとう日曜の夕方から降り出した雨は断続的に今も続いていた。 この土、日曜に長沢雅恵が待つ学祭へは、とうとう行かなかった事を考えちくりと胸が痛んだ。 雨足がやや強くなっていたが、先週末と同…

ミモザの咲く頃に その11

「お待たせ・・・」 部屋を出ていた美央が戻ってきた。 両手で抱えたトレーには、色とりどりのモノが満載している。 昨夜は無かったと思う。部屋の隅に置かれたガラステーブルにトレーを載せた。 (この為に用意していたのか) 「どうぞこちらへ、立ったまま…

ミモザの咲く頃に その10

前回までのあらすじ1980年、総合商社船場商事新入社員の森野彰。ある日常務に呼び出された。なんと一緒にピアノ教室に入ってくれとの依頼だった。最初は固く断っていたが、とうとう説得されるハメに。教室に行くとなんと教師は15の少女だった。一方、…

ミモザの咲く頃に その9

「森野、頼みがある。ちょっと残っててくれるか」 ・・・・・・・・ 予感はあった。(新米の僕への用事て、ひとつしかない。おそらく。。。) 前村加奈子と二人でテーブル上を拭いたり、ガラスコップや紙くずを片づけ終える頃、一旦会議室を出ていた常務が戻…