小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その17

「まもなく大阪、大阪でございます」車掌のアナウンスが始まった。到着ホームの番線と乗り換え案内がスピーカーから流れている。だが、ほとんどの乗客は聞くこともなく、ざわざわと降車の用意を始めた。 列車は淀川の鉄橋を渡り始めた。水鳥が数羽、川面に身…

ミモザの咲く頃に その16

雨にけむる湖畔の道。。。 こうして、文字に書くと"詩的”な雰囲気が漂うけれど、実際はとてつもなく寂しい風景だった。鈍色(にびいろ)の空から降る雨。時折吹く風も、半端じゃない強さだった。 あの日、もし独りだったとしたら、どれほど僕は落ち込んだろ…

ミモザの咲く頃に その15

「いやあ、どうもどうも」悪びれもせず、入ってきたのは若い男だった。時間に対する観念は案外ルーズなのか、テレビ局。時計を見ると約束の時刻は40分も過ぎていた。それでもさすがに「どうも、お忙しいところを」前村はさっと、立ち上がって一礼した。一…

ミモザの咲く頃に その14

「じゃあ後は頼む」 そう言い残し常務は会議室を後にした。 「あッ」 何気なく目に入った常務の突き出た腹を見て突然思い出したのだ。 週末に見た深夜番組だ。夏のシーズンを前に琵琶湖のお勧めレジャースポットをコメディアンがリポートしていた。少しエッ…