小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その26

見事なまでに夕日に染まった富士山。 まるで、見るものに「小さいことでいつまでもクヨクヨするな」 そう語りかけてくれている。そんな気がした。 圧倒的に壮大。しかも美しい。 わずか数分足らず、車窓からの景色ではあったが、満足だった。 目に焼き付け、…

ミモザの咲く頃に その25

(国公立のエリート校出身者じゃあるまいに。北河内大学の名が泣くぞ。)何かの夢をみていた。薄ぼんやりと目覚め始めた時ふいに国光の言葉が脳内で響いた。まるで鐘を打ち鳴らされたかのように。風を切り走る音が聞こえ、ざわざわと人の声が続いた。ぼんや…

ミモザの咲く頃に その24

「やば、もうこんな時間か。帰宅ラッシュが始まらんウチに行こか。東京のラッシュは半端やないけん」三宅はさっと伝票を掴みながら立ち上がった。思わず、時計を見る。午後4時20分。それでも喫茶店の大きいウインドウガラスから見える街路樹には燦々と陽…

ミモザの咲く頃に その23

(オー、ノー)と云ったきりジャンニ・ビアンコは頭を抱え込んだ。日本人ではけっして見られない派手なリアクションゆえ、(まさか演技?)と思わせるものがあった。その証拠に、1分もしないうちに笑顔で「OK、ミスターイムラ。ミニマムは1億リラ。条件…

ミモザの咲く頃に その22

船場商事東京支社は、青山通りに面していた。都心にもかかわらず、緑の公園が周囲を埋め尽くし、一瞬、都会に居るのを忘れるほどだった。 ここ8階フロアーにある役員会議室。窓から一望できる緑の風景は実に壮観だった。 昼食のあと、窓際でひと時の休憩タ…