小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧

狂二4 NINE.sec その26

島根ほどでは無いにしろ、例年にない寒波に見舞われた1、2月の大阪だった。 おまけに北部の丘陵地帯に位置する北摂大グランド。大阪市内など平野部ではカラカラに乾いた快晴でも、ここでは数センチの積雪に見舞われることもしばしばだった。 本来なら長距…

狂二4 NINE.sec その25

「じゃあ午後4時、この前の”割烹まえむら”ですわ。中崎町の」 「了解です、では後ほど」 ヒロシからの携帯を切ったあと、ふと鈴木圭子の顔が浮かんだ。 彼女からの手紙(奇跡のヒーロー達に会いたいです)の文面がいつも頭のどこかに残っていた。 それに・…

狂二4 NINE.sec その24

眼の前に延々と広がる茶褐色の砂漠。砂をかきあげながらさまよっていた。 ひとり。。いや前を歩く女性の背中があった。すらりと細い、だが歩く速さはなかなかのものだ。追いつけるようで追いつけない。肌を灼くように照りつける太陽。そのくせ手足の先は氷の…

狂二4 NINE.sec その23

「じゃあ、寺島さんも来られましたことですから。。。」 ムツゴロウ教授が口を開き、山根監督が 「寺島さん、お忙しいところ誠に申し訳ない、ざっとこう云う事情なんです」と ふたりがなぜ平行線をたどったのか、かいつまんで説明を始めてくれた。 ・・・・…

狂二4 NINE.sec その22

なんとなく、バスタブに浸かってる時から予感がしていた。昔からそうだった。 待ちかまえている時に限ってなかなか来ず、そうじゃない時、ふいに現れたりする。案の定風呂から上がると、携帯電話の小窓から着信を知らせるフラッシュが点滅していた。 しまっ…