小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの花が散ったあとに 9

もともとあった自然の河に、人工的に手を加え、まっすぐに仕上がってしまった岸壁が”いかにも”と云う感じで無粋だった。 遠くにはコンテナをつり上げる鉄骨の巨大なキリンがズラリと立ち並び、倉庫や船の修理工場が多くあった。けれど、視界を狭めるならば、…

ミモザの花が散ったあとに 8

前回までのあらすじ1981年(昭和56年)3月、恋人との哀しい別れを経験した森野彰。すさんだ日々を送っていた。そんなある日、泉州アパレルの原田社長からの誘いで楽しいひとときを。だが、深酒の結果、ヤクザに売らなくても良い喧嘩を。。。。案の定、ズタ…

ミモザの花が散ったあとに 7

「あほッ 自分で慰めてただけや」「え?慰めるてナニを」彼女はさらに真っ赤な顔になって「あほ」と云いながら テーブルのフキンを投げつけ笑った。投げつけられたフキンは、首に当たったあと、膝に落ちた。湿ったそれを拾い上げながら「そんなあ。いったい…

ミモザの花が散ったあとに 6

なにやら篠原さんの呼ぶ声がし、振り返ってみると常に閉じられていた寝室側のカーテンだったが、すっかり全開。少し遠く、通天閣の先っちょ部分が見えた。篠原さんは、窓を開け「寒ぅない?」と訊き「こないな時間に部屋に居るんは、一週間ぶりやから空気を…

ミモザの花が散ったあとに 5

大阪市の地図で云えば、中心部(本町あたり)から南西の方角に車を走らせ、たとえゆっくりな速度だとしても20分とかからない。さらに5分も走れば大阪湾に突き当たる。篠原芳美さんのマンションはそういう場所にあった。リビング側の窓からは、建設中の大…