小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

そして、池上線69

「じつはこちら佐伯社長さまのご依頼で、とある方が昔、住んでられた居場所を確認しておりました」「え、この私の」 「いえ、高野・・・いえ吉岡紫織さまです」 「は、はい!?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

そして、池上線68

会社に近づくにつれ、印刷機の音が大きく鳴り響いて来た。 本日も松浦はフル稼働中。よくぞアポが取れたものだ。労(ねぎら)いをと、馬渕に振り向いた時だった。 え!? 馬渕はピタっと歩みをとめ、しばしのあいだ眼を閉じ、佇んでいた。まるで記憶の向こう…

そして、池上線67

しばしの間、黙ってハガキを見つめていた。すると「佐伯さん一緒に行きませんか、京都」かけて来た馬渕の声に、どきりと胸がなった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 京都。。。。 最後に訪れたのは、いつだったろう。独立後はとう…

そして、池上線66

「え。憧れの池上線?て、あの池上線」て訊くと 馬渕は静かに 「えぇ、あの池上線です」と答えた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5月のゴールデンウイークを前にして、日々の業務は多忙を極めた。 受注、発…