小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

狂二 1

狂二・・・・と何時の頃から呼ばれ始めたのか 忘れた。
いやガッコ行ってた頃からだから、もう3年か。。。 

蒸し暑い 夜の街を “獲物”を探しながら狂二こと、河本浩二は 氷の眼をしながら歩いていた。
獲物・・・・ 簡単に見つかりそうで なかなか見つからない。 
簡単に見つかる・・・と言うか、向こうからやってくる場合も、夜の街を彷徨えば  タマには ある。
で、今夜もそうだった。奇声を上げながら、5、6人のグループが近づいて来た。 で、わざと猫背にし、うつむき加減に歩いてみた。
さっそく これ以上無い 百パーセントの確率で そのグループの先頭を歩いていた坊主頭が 声を掛けてきた。 
背は 猫背で歩いている狂二より僅かに低い。。。。 それでも180ちょいは、あるのだろうか。少し膨らみ加減の胸板が気になりはしたが、折角の今夜の獲物。逃すわけには行かない。
『よう!兄ちゃん お金貸してや』
もっと気の利いた他のセリフ、言えないのかこのクソがッ
心の中で毒づきながら 一瞬“背”を向け 逃げるフリをした。 
『オイオイ 待てや』そのグループの後ろからも声が上がった。 

同時に蒸し暑い空気を裂く こぶしの音。
だがタイミング良く、狂二の 後ろ回し蹴りが最初の獲物の 右首を捕らえ、着地と同時に 左アッパーが 最初のボスの アゴを砕いていた。 

げッ ゲッ・・・・小さな叫び声と友に 奴らの仲間を置き去りに 逃げ出す 他の数人。 

『逃がすか』 煙草を辞めた 狂二の体力が 瞬間、他の仲間の背に追いつく。 で、いとも簡単に 獲物たちは アスファルトに頬ずりする。 

ちッ もう少し 殴りがいのある 獲物、何時になったら お眼にかかるのやら。 心の隙間を 埋めてくれるもの  いつかは やってくるのだろうか・・・・

 まるでラジオ体操後、少しは 汗をかいたかな。。。 とでも言うぐらいの 額の汗をぬぐいながら闇間に消えた。

                つづく