小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

狂二 2

コンビニエンスストア “レーソン”アルバイト店員古庄多美恵38歳は入荷されたばかりの商品の 棚入れ作業をしながら、ちらッ とレジカウンター奥の掛け時計を見た。 
午前5時10分・・・・・『もうすぐ あの子がやって来る。。。』
今はコンビニの店員をしている多美恵だが、数年前まで実家北陸の中学校の教師をしていた。 だから店にくる 少年、少女たちの所作や顔の表情には 今でも関心がある。て言うか、彼らの上辺の奥を気が付けば何とはなしに、探ってしまう自分が居た。 
単なる好奇心と言われればそうかも知れないし、多分昔の哀しい習性なんだろう。 が、キッカリ午前5時15分に弁当を買いに来る青年だけは 瞳に隠された奥の表情を掴み切れずに居た。最初 ヌゥーと突然レジ前に弁当を差し出された時、あ!何時の間に?というぐらいの 気配を殺して現れた早業だったし、かと言って 存在感はアリアリの見上げるほどの長身だ。 
少し線が細いのが気になるが。顔は やや青白く 鼻筋の通った 今風のモテ顔なんだろう。きっと。 ただ 眼の表情・・・・ぎょッ とするぐらい 深く 暗く 冷たい。  そのクセ お釣りを渡す時 一瞬指先が触れた時があったが明らかに 動揺する仕草を見せた。 
異性に対してはまだ免疫力が出来ていないのか。で、歳は・・・・・おそらく二十歳前と言うところか、が、社会人でもなく 学生でも無さそう。 第一 午前5時過ぎ ほぼ毎日コンビニ弁当を買いに来る その理由がわからない。
ま、あれこれ詮索する事では ないのだろうが、気になる。恋 ? あは、まさか 

この歳で・・・・・・そうこう考えこんでいる内に その青年 “狂二”が店内に入って来た。     
つづく