小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

狂二 15

その後も、高城は中岡社長の説明を受けながら小一時間、構内を見て回ったが、“うーむ・・・”と唸りっぱなしだった。
外から見ただけでは気付かなかったが、構内の作業場は見事なまでに整理整頓が行き渡り、チリひとつ見なかった。ともすれば乱雑になりがちな 袋類の荷物がまるで定規を当て積み上げたように まっすぐな線を描いていた。

「あのセメン袋も?」
「常務 あれも奴が来てから、ピシッと整頓なんです。ホント、おかしな彼で。ふつう人が嫌がる直積み(じかづみ)を喜んでやるのです。」
「ほーう」
「何でも筋トレに持って来いとか。。」
そうこうする内に 10トンの大型がバック時の警告音を吹きながら入って来た。
「オラーイ、オラーイ」誘導するコージと呼ばれた青年。
停止と同時に コージに駆け寄る運転手。伝票を口にくわえながら観音開きを開ける。
そこをめがけ ローラーと呼ばれる “コロ”を投げ入れる。
 積み上げられていた荷物を軽々と運びローラーに次々と流してゆく。
運転手と一緒に荷台の奥へ走りこみ 荷を積み上げて行く。。。
「ココではトラックへの積み込みも手伝っているのかね?」
「いいえ、あ奴だけで。。。おかげで運転手連中から好評で、彼が来てからココでの作業時間、かなり短縮され大助かりだと。。。」
「う~む・・・」
ようやく積み込みも終え、大型は出て行った。
「常務、呼んできます」
「頼む」

「俺になんか用すか?」ヘルメットを脱ぎながらフォークリフトから降り立ち、やってきた。
遠くでは気が付かなかったが、170ある高城でも見上げる程の長身だった。


ハッ もしや。。。高城の脳裏を情報屋からの携帯がよぎる・・・・・
(はい 結構な使い手で、かなりの長身で。)
たしかこのあたりで見失った筈・・・
あらためて観察してみると、単に長身なだけでなく、半袖作業着からはみ出した二の腕は異様なぐらい筋肉が盛り上がっていた。ヘルメットをつかんだ手のこぶしは まさに拳法家特有のそれだった。
今の所、特有な“”は発していない。それとも、わざと隠しているというのか?。
顔をまじまじと観察する。幼さがどこと無く残っているものの、眼光はやはり鋭いものがあった。


「中岡君 彼と二人だけで話がしたい、いいかね?」

                つづく