小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

狂二 最終章 前編

非常階段を降りる前に 狂二は作業ズボンの裾をめくり上げ鉛の重りを両足首から取り外した。
「お前 そんなの付けてたんか? ドラゴンボールの悟空かよ」
「よしッ これで少しは身軽に・・・」
「道理で動きが少し鈍いと 思ったぜ」竜一があきれながらもつぶやいた。
非常階段を降りた二人は 事務所棟のグループに気付かれない様、素早く冷凍倉庫前に走った。
「おい、狂二 いつもならこの時間 何している?」
「倉庫内であと片付けとか、スクワットとか・・・」
「いつもは一人なんだな」
「ああ、この時間帯は」
「思うに 奴ら相当前から偵察してた、思う。大型トラックが出てしばらくして乱入したのは偶然やない思う」
「あ、なるほど」
「で、まっ先に女性ばかりの作業棟を狙ったてワケか」
「次に奴らの狙い・・・つまりココ」
「奴らは 狂二 一人だけと思ってる筈だ多分」
壁に耳をくっつけ 内部の音を確認してみる。が奴らは無言で捜索しているのか、何も聞こえなかった。
「なるほど 若ボンの存在は想定外て訳か。。。」
「別々に入って行こう。奴ら驚くぜ」そこでフト思いつき「あ そや 庫内の電源落としてやるか。。」
「冷凍は止まらないのか」
「停電に備え、冷蔵冷凍の方は自動的に非常用電源に切り替えられるようになってる」
狂二は倉庫横のBOXに案内し「俺が飛び込んで 30秒後にこのバーを降ろしてくれ」
「先で 大丈夫かぁ」
「ここの住人だぜ、目つむってもばっちりや」
「よし 分かった。30秒後だな。電源落として 直ぐ俺も突入する」
「足手まといは 堪忍な」
「じゃあ・・・」
 狂二の突入まで見届けると 竜一は 大きく深呼吸しながら30秒を数えた。         

               ※

「何 竜さんを築港冷凍に置いて来ただと!」 
高城常務は坂本社長とバッタリ出くわした大阪府警の入り口で声を荒げた。
「常務 すんません。でも何故・・」
「コージとか言う青年居たやろ 彼こそ竜さんのアゴを一撃で砕いた張本人や」「えッ そんなあ。。」
「えぇーー!」傍らに居た中岡社長も同時に声を上げ「早く帰らねば」
言いながら携帯を取り出した。
「変だな・・・電話がつながらない。。」
高城は「急ぐぞ」
言いながら 二人をハマーに案内しドアを開けた。
「常務 私は築港冷凍の車で来ましたので・・・」
「いや、ココに置いて行け、これが良い・・」 イグニッションキーを捻ると 排気量5967CCのモンスターが唸り声を上げた。

                 ※

倉庫内に飛び込んだ狂二はいきなり門の近くで見張っていた男と出会う。
「いッ!」
驚き立ち止まるその男のわき腹に 素早くも全身の力を込めた突きを入れる。

うグッ
うめきながら下向くそのアゴをめがけ、蹴り上げる。大きくのけぞり 後ろに倒れこむ。
ガシャッ  銃が床に落ちる音が響く。さらにその銃を蹴り込む。
「ホワッツ!?」奥に居た周囲の男たちが 英語で叫びながら 駆け寄って来る。狂二の姿を捉え、銃口を向ける・・・「ヘイ!ストップ

「24 25 ・・・」30秒を数える狂二。
バチッ!真っ暗になる。
よし 今やん。。
ジグザグにステップを踏みながら 男達の前へ呼吸を計り 左右に存在を確認。両足を開脚しながら飛び上がる。ぐわッ! がッ!鍛えられた狂二の両足首が左右に居た男達のアゴを捕らえる。二人同時に倒れこむ。「さっさと倒れやがれ」叫びながら 男たちの背中にひじ鉄を叩き込む。
カーン、カーン 軍靴の音が徐々に近づく。さらに奥に居たテロリストらが物音に気付き駆け寄って来た。奥の冷凍ブース内に居たその男らは吐く息を凍らせ、眉毛やらにツララを作っていた。
「!」
「!」
やはり その三人組は 以前会った事のある奴らだった。
いつの間にか 奴らの後ろに回りこんでいた竜一が真ん中の男の背中を蹴り上げる。
「マッ、マッテクレ・・・」なにやら 片言の日本語で喋り出した。
「ワタシラ3人ハ カンコク ヒミツソウサカン。。。」
「おい、日本語喋れるのか?」
するとコックリ頷きながら 真ん中のリーダーらしき男が喋りだした。
「ウソジャナイ、ワレラは コクサイテログループにシノビコミ、ヤツラと コウドウを トモニシテキタ」
「やはりテロ組織なのかお前ら」竜一が声をかける。
「テロは ホカのレンチュウ。。。ブキ ダンヤクら、ゲンブツのショウコをミツケシダイ、トウ局ニレンラクし、タイホのヨテイ」
「本当やろな?」
「シンジテクレ・・・」そう言いながら男は銃を狂二らに差し出した。      

  最終章 中編につづく