小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編 4

まず最初にジャージ姿の男が 軽トラ、運転席の横に立った。 金のブレスレッド、同じく金のネックレスをぶら下げ、ジャラジャラ鳴らせた。

「おう、じいさんこのボロトラック邪魔なんや、なんとかしたれ」


「それがニイチャン、動きまへんねん、ガス欠だ」 顔色一つ変えず、煙草の煙をその男に向かって 吐き出す

「ちょ、ちょっ 秀じぃ。。。」 横で孫娘のサヤカが秀治のわき腹をツツク。顔面は蒼白になっていた。

「ほら、ガラの悪いニイチャンが来たから可愛そうにうちの孫、おびえてるやんけ」

「なんやと、こらぁ 煙草吸うてんと、出て来いや」

「ケンジ、さっさとドカせたれや、オヤジさんがベンツの中でシビレきらせてるわ」 後ろで見ていたスーツ姿がだみ声で怒鳴る。 「兄貴、それがこのじーさん 動きまへんねん」 「動かんかったら、つまみだせや、ヒロシお前も、手伝って早よ、なんとかせい

ヒロシと呼ばれたもう一人のジャージ姿も慌てて軽トラの運転席の横に走る。

「じじぃ、出て来いやッ!」 派手な音を立て、軽トラックのドアを蹴り上げる。

「うわ~」 サヤカが悲鳴を挙げる。 「しかたないのう・・・・」

周囲の車のドライバー達は 青ざめ、黙って見守るだけだった。 遠くに見える歩道から何人か騒ぎに気が付いたが 遠巻きに見守るしかなかった。

ようやく秀治が運転席から降り立つ

「おい、ニイチャン 何蹴っとるんや」 「何やと、腐った軽トラ蹴って何が悪いんじゃ」 言いながらヒロシと呼ばれた 若いジャージ姿が 秀治の胸倉を掴みかける。

が、秀じぃにひょいとかわされ、反対にその手をネジリ挙げられてしまう。 「あいたた。。。。。」

ヒロシの顔が苦痛でゆがむ。

「おらッ じぃさん 何すんねん」 最初のジャージ姿が 秀治に掴みかかる。

その時

ベンツの中の男が慌てて飛び出して来た。

「もしや 貴方は 田嶋の秀さん。。。家島のサメ漁師・・」

「オヤジさん このじじぃ 知ってはるのでっか」 スーツ姿の男が振り向く。

「おッ 名前は忘れたが 懐かしい顔は見覚えあるで、おまはんあの頃ボディガードしとったのぅ」

「あー やはり。。。」 そして、スーツ姿に向かって 「この方は、その昔 本家の三代目の命を救った方や お前ら失礼は無かったやろな」

「え゙ーーーー!」

男達の驚きの声が姫路市内 大通りの交差点で響いていた。

つづく