小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編11

その朝 ベランダの鉢植えに水をやっていた古庄多美恵は
リビングの電話機の呼び出し音に気付き慌てて部屋に戻った。

 が、同時に呼び出し音が 止んだ。
気になって 着信メモリーの検索ボタンを押してみる。だが
時刻のみ着信記録は残っているのに肝心の
相手の番号は表示されていない。
「またか。。。変」

相手が番号の非通知設定ならば 呼び出し音も鳴らない様に 非通知拒否にしている。

今回で三回目・・・・



着信記録を あらためて検索してみた。
するとどうだろう、時刻の記録だけで、相手番号の不明なのが
5件も出て来た・・・
「故障かしら。。」
携帯で あえて “184”を頭に、コールしてみた。
が、ものの見事に拒否される。

着信記録は さっきの時刻と同時に “非通知”の文字がくっきりと表示されていた。

次の日 コンビニの後輩に相談してみた。
「ふーん それおかしいやん でも・・・」
栗色の毛先をクルクル指先で回しながら 年長の多美恵に対し、平気で 友達言葉を使う。

『そのクセ、客が居る時だったら絶対厳禁だからね・・・』
思いながらも 次の言葉を待った。
「でも・・携帯への転送設定って、知ってますぅ?」
「何 それ。。。」

以前 携帯ショップにバイトしてたと言うその後輩は
電話にまつわる様々な機能に詳しかった。

事前の申し込みが必要だが 固定局が留守などの場合とか、自動的に携帯へ転送するシステムがあるそうなのだ。

 外出先だろうと、部屋に居ようと、携帯なら直ぐに出られるし、相手番号も表示されるのでは?
という事だった。

「ふ~ん 色んな機能て あるもんやね」

あの日 コウジに買ってあげた 揃いの携帯を見つめながらつぶやいた。

テロリストの野望から日本を奇跡的に救いながらも
行方不明のままのコウジ・・・

事件の性格から大阪府警本部はマスコミに対し 報道秘密協定を設定し、極秘裏に捜査を続けている。

 今頃 どうしているの・・・

「はっ もしや・・・」

最近立て続けに鳴る電話は コウジからのメッセージでは?

そんな気がしてきた。

外に出、ふと見上げると桜の花々が見事なまでに
 4月の空を 覆い尽くしていた。

桜花


         つづく