小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編15

中国大陸本土。
南海岸に突き出た半島 マカオ。カジノと観光の町。

そこの裏通り ハンバーグレストランの3階の狭い部屋で
キムジョナンは 世界的に有名な ネットの動画投稿サイト
ユーブロードキャスト(YouBrodcast)を特にあてもなく観ていた。

パソコン モニター右下に表示されている 
04:19の数字を確認し、
そろそろベッドに潜り込もうか・・・そう考え 最後 いつもの儀式

検索窓に “Japan" と打ち込み クリックし 
最初に現れた奴を 再生させた。
丁度その時だった・・・・




“!!”

見覚えのある て言うより 
忘れように忘れられない 日本のあの男が大写しになった。
そいつは 岩に背中をくっつけ 飾り立てた派手な屋台の様な物をイカツイその肩に乗せようとしていた。

はッ!と 液晶モニターに飛びつき、食い込むように覗き込む。
何度もリプレイし 確認した。
 投稿者のプロフィール欄をすぐさまクリック。
だが特定出来るような情報は 当然の如く記載されては居ない。

チェッ ジャパニーズめ。プロフィールを隠したがる習性には反吐が出る。

『間違いない あの男だ。そうか生きていやがったのか』
あの男とは 昨年夏 オーサカ・ツルハシの裏通りでも一度会っている。

そして11月・・・
あの時 爆破騒ぎにかこつけ こっそり命からガラ逃げ出したものだ。
冷凍倉庫内で 蹴られた痛み 傷は 一生忘れない。

PC画面は 携帯からの投稿ゆえか ざらつく様にぼやけては居たが、それでも最新の機種からなのか 
時おり鮮明に映し出されていた。

すぐさま 携帯メールで 組織本部へ その旨送信した。

その組織 国際テロ組織 アレ・カイーナは
秘かに潜入させた アメリカCIA(中央情報局)のメンバーを通じて ユーブロードでの強制捜査
投稿者の特定に 今から24時間とは 掛からないだろう。

そう確信すると ジャパン オーサカフケイに身柄を確保されたままの
唯一の身内 アニキ キムドンゴンの笑顔を瞼に浮かべ
ベッドに潜り込んだ。。。 

兄貴 待ってろ。 奴とジャパンに復讐を。
そして 必ず救い出してやる・・・

 念を込め決心すると いつまでも目は冴えて 
 なかなか寝付けなかった。

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コンビニ ラーソン 勤務時間が終わって 
「じゃあ、お疲れ様 お先に」
多美恵が更衣室で着替えようと ロッカーの扉を開けた 
まさしくその刹那 携帯が鳴った。

「はッ」

あの時 コージと相談し 決めた あの曲だ。

3.5インチ四方の 小さく可愛らしいディスプレイ。。。

しかし 多美恵には これ以上望むべくもない 待ちに待った

“コージ”のデジタルの文字がくっきり大きく表示されていた。

「モシモシ コージ コージ君なの 今 何処なの!!」

おそらく 更衣室の壁を突きぬけ、店内にまでその声が響いたのでは?
程の声を張り上げていた。

だがしかし 受話口からは

「あッ・・・・」

女の子の 驚いたような 小さい返事が聞こえ やがて 

「プッ・プープー・・・・」

切れてしまった。

必死に 先ほどの 受信履歴を表示させる。

何度も プッシュするが 電源を切ってしまったのか
 とうとう繋がらなかった。

一瞬 打ちひしがれ 床に座り込みそうになった。
が、

先日も訪問してくれた 田嶋総業 常務の顔を思い出した。

「じゃ その後何かわかったら 何時でも電話下さい」
あの事件の後 多美恵の存在に気付いた高城常務は、

「そうですか あの青年が貴女と・・・・貴女の存在が奴を立ち直らせてくれたんですなぁ」と
多美恵の存在を喜んでくれた。

その後 何度もこの店に立ち寄ってくれて居た。
 
「あ奴の事 必ず帰って来ますよ」
あった日は必ず この言葉で締めくくってくれた。

あの人なら なにか手がかりを見つけられるのでは?

迷う事無く 高城常務の携帯ナンバーをプッシュしていた。



        つづく