小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編21

大阪府議会選挙投票日を翌日に控えた 『田嶋候補』選挙対策本部は
最後の追い込み確認作業に忙殺されていた。
 政権与党“民自党”のゴタゴタのあおりを受け、思わぬ苦戦を強いられて来たが、
地元の組織票を重視し、民自党には元々頼らない関西特有の選挙活動が功を制し 予想ではトップ当選の“報”も出た。 

が、選対本部にて総指揮をとる 高城は油断大敵と、最後の引き締めに余念が無かった。

 田嶋候補最後の遊説選挙カーを見送った時 まるで様子を図っていたかのタイミングで携帯が鳴った。

情報屋からだった。



「はい、高城・・・」
支援者達でごったがえす事務所を避け、奥の応接室に移動する。

「・・・・それで、何 姫路? 家島?・・・判ったのか、はい
分かった 引き続き頼む」

情報屋の話では 携帯を手掛かりに ダメモトで色々当たってみたところ、仕込まれたGPS情報から 姫路市内と家島からの発信記録が判明したとの事らしい。

ただ、発信は本人ではなく 携帯を何らかの方法で手に入れた第三者
とも考えられる。

 『彼女に知らせるのは もう少し判明してからだな・・』
それより 家島の地名に 軽い驚きを覚えた。

『田嶋社長の故郷じゃ ないか・・・ 確かお兄さんが今でも現役の漁師として頑張ってられる筈だ・・・』

お供としてお邪魔したのは、かれこれ20年にはなる。

家島かぁ・・・潮風が懐かしいのぅ・・・

青い海 空を 思い出していた 

「常務、民自党 麻田幹事長からお電話です」
野原秘書が入って来た。

             ※


携帯ショップ店長 今野慶一がマンションにようやく帰りついたのは 午前2時前だった。

店のシャッターには “当分休業”の張り紙を貼り付けた。
事実 ショーケースの修理やら その他 携帯本部“Soft Tank”との
事務連絡 保険会社との折衝などなど 当分は通常営業は無理な
話だ。

押入れから 久々に “アイコム”の無線機を引っ張り出した。

不審な三人組 逃げる直前に 交信していた 無線機の機種には
覚えがあった。

 と言うより 大学1年まで 使っていた機種と同じ物だった。

50/144/430MHz帯の3つの送受信が可能だ。

ダメかもしれないが 周波数を探ってみることにした。
おそらく日本語での会話じゃないかも知れない。
が、録音すれば 後日 なんらかの手掛かりにはなるだろう。

奴らの動向を知るだけでも 何となく 優位に立てる気がしたのだ。

録音機 PCとの接続 等など 配線を確認すると
そろり、ダイアルを回した・・・

       つづく