小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編24

幸いにも、飾磨港フェリー乗り場は閑散としていた。
長身のローレンスには紺色のビジネススーツに着替えさせ、
目立つのを少しでも低減させた。が、平日の午前10時と言う中途半端な時間帯か、フェリーに乗り込む客は まばらで、皆
他人には無関心だった。
『この国民性が今の俺たちには幸いだぜ』
心で毒づいた。
 


本部との無線連絡を終えた キムジョナンは、今にも降り出しそうな曇り空を見上げ、
 とりあえずは都合良い・・・・
嵐にでもなれば、追っ手はしばらくやって来れない。しかし・・・

台湾海峡を無事突破し、与那国島領海に突入した 
アレカイーナ本部隊100名を載せた 輸送船が気にはなった。
 先ほどの無線連絡では 韓国の工作員が 領土問題で揺れる竹島でワザと騒ぎを起こし、
ジャパンの海上保安庁や、
海上自衛隊の注意をそちらに向けさせ、
その間隙を縫って、南海上から IEZIMAそしてO-SAKAを目指すことになっているのだ。。

この季節にしては 珍しく南海上で誕生した 温帯性低気圧の存在が
心の隅に 引っ掛かりを覚えた。
気象庁の予報では まさに 沖縄 九州南部 四国 瀬戸内 関西
と、本部の輸送船を追いかけるがの進路予想だった。

とりあえずは 我等に課せられた作戦を遂行するのみだ。

頭の中で 何度もシミュレーションを繰り返した。


僅か30分の距離で着いた。

下船したフェリーターミナルの構内放送で、
午後からの欠航をしきりとアナウンスしていた。

『はは・・・この島は 本土とは当分隔離されるのだ』

フェリーターミナルの待合椅子で 島の地図を広げた

目指す神社の位置を頭に叩き込み、そして 警察署の場所をもう一度探す。

事前に探していたのだが 探し切れなかったのだ。

何度隅々まで探しても 見当たらない。

仕方無い 尋ねて来る・・・
キムジョナンは売店でヒマを持て余し、仲間たちと無駄話に講じる店員に尋ねた

「あの・・この島には警察署はないのですか」

「おやまぁ、お客さん 警察に用事ですかい・・あひゃ」
何が嬉しいのか、金歯を光らせ くしゃくしゃな笑みを見せた

「この島では駐在さんが居るだけですよって・・・うひゃひゃ」
「チューザイさん?」
「駐在さん あッ 正しくは 交番所て言うね。お客さん 関東の人?」

「まぁ・・・どうもアリガトゴザイマス」

まだ何か話したがりそうな売り子を無視し、椅子に戻った。

「ヨシ 行こうか、すんなり行きそうだ」

なんと この島には 駐在所と呼ばれた所に 巡査と呼ばれる警察官が
たった独りで留守を任されているらしいのだ。

 
目指す 駐在所は 僅か20分程で着いた

聞いた通り ちっぽけな部屋の奥で 年配の巡査が独り書き物をしていた。

示し合わせ 3人で入る

「ちょっと スミマセン」

老眼鏡を外しながら
「なんと背の高い外人さんですなぁ」
間の抜けた声をだした。
「で。どうされました」

「実は あッ 痛 イたた・・・・」
しゃがみこむ。

慌てて 駆け寄る 巡査 

廻り込んだローレンスが 背後から 首を絞める

「うグッ な 何を」

そのスキを見て キムジョナンが腰の拳銃を引っこ抜く

ニューナンブM60拳銃と呼ばれる 38口径リボルバーの本物だ。

「俺らには必要ないが、とりあえず 頂いておこうか」

拳銃を上にかざし、キムジョナンが不敵な笑みをこぼした。


             つづく