小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編46

マツ島消防団団長の大沢の指示で 携帯基地局の応急修理を何とか終えた
島の電器屋 渡辺三郎は 胸ポケットの携帯を取り出した。

傍らで 修理の手伝いをしてくれた 大沢の甥っ子 鶴野健太と彼の仲間らが心配そうに覗き込む。

フリップを開ける・・・

「ヤッター 三本や」
鶴野がはしゃぐように 叫んだ。





               ※
携帯のアンテナ感度が三本なのに気付いた 佐々木は
高城常務を呼び出す。

「あ、常務 佐々木です。あれから・・・・」
出来るだけ短く しかし、詳しく その後の出来事を報告した。

「え! こちらに向かってられると。。。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「この天候ですよって フェリーはおそらく・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「なるほど 坂本社長のクルーザー・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
携帯に向かっていた佐々木の声が変わった。

「ウメ島?ウメ島に残りの二人が向かった可能性が・・・は、はい
こちらでも確認してみます。・・・では 後ほど・・・」


 固唾を呑んで聞いていた 消防団の島岡らに
通学船を奪った連中がウメ島に向かった可能性があることを告げた。

「えッ ウメ島・・・」
島岡と森田が ほぼ同時に 声を上げた。

「その島に 何かあるのですか」

「いえ・・・ただ・・・」

島岡と森田は お互いの顔を見合わせ 気まずそうに目を伏せた。

「なにがあるのか知らんけど ワシらもそこに行こうやないけ」
ヒロシがいきり立つ。

「しかし この嵐や・・・潮がの・・・」

横殴りの雨になった空を 島岡が見上げながらつぶやいた。

「嵐がなんじゃい、女の子と 用務員 それに船長が無理やりその島に行かされてるんとちゃうんか」

「うーーむ」


                ※

姫路署に 急きょ設けられた “不審外人による家島テロ事件捜査本部”
会議室では 署長の懇願するような声が電話に向かっていた。

「なんですって 江田島の特別警備隊、日本海で足止めをくらっている ってか・・・対馬と、竹島の騒ぎ・・・で不審船の確認もまだ・・」

がっくり肩を落としながら 受話器を置いた。

「署長 不審船の情報確認はまだなんですか」

「この天候・・・や、それに昨夜来 対馬竹島での一連の不審船騒ぎで 全艦隊、出払ってるちゅう事だ」

「んな あほな・・・え、江田島の基地、空っぽちゅうんですかい・・・
瀬戸内海は もはや無法地帯と同然ですんかい・・・」

 加納課長も 肩を落とした。

「課長 署長に向かって その言葉使いは・・・」

柴本が 注意をする。

「はッ すみません 署長・・・」

「い、いや そんな事はどうでも・・・」

 姫路署会議室に 不気味な静けさが 再び支配した。。。。






           つづく






 尚 狂二シリーズは フィクションです。
実在の 組織 地名 団体等と 関係はございません・・・ので。

 (-。-;)