小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編63 最終章後編そのニ

大沢とリ・スンヨクの二人を残して エンジンルームを出、
しばらく歩いた時だった。

コツンッ コツ コツ・・・
複数の軍靴が背後から聞こえたかと思ったその時 
バッ バババババーン 機関銃の銃声 同時に足元の鉄板やら
側壁を打ち砕いた。
「トマレ」
片言の日本語が後ろで叫んだ。




「いきなりかよッ くそう」
「あの入り口や」
キムが前方を指差し怒鳴った。

キムが指差した前方には鉄製の扉があった。
扉の向う側にさえ駆け込めば 後方の連中から逃れられる。

銃弾を避けるように飛び跳ねながら全員走る。

怒涛の勢いで駆け出す。が横幅1メートル程の狭い通路ではどうしても
一列での駆け足になってしまう。

背後から執拗に銃弾の嵐が襲う。

前方の集団は何とか扉をくぐり抜けたが ヒロシとゴンが取り残された。

「よし ワシに任せろッ」
ヒロシが突然立ち止まり 最後尾にいたゴンと入れ替わる

「ウラァあああ」
怒鳴りながら 腹巻から拳銃を取り出し敵の方を振り向いた。。

パーン パーン 二発程、弾が発射される。

不意を突かれたのか後方からの銃弾が止まる。
その一瞬を ゴンは見逃さなかった。

横壁に跳躍したかと思うとその反動で さらに
横っ飛び。敵の兵士前で着地 ゴロンと1回転のち 
銃を持った相手の足を払いのけた。

あっけにとられたその兵士はなすすべもなく簡単に尻餅をつく。
瞬時に立ち上がっていたゴン、尻餅の兵士の後頭部を廻し蹴り、
振り下ろした蹴りの足を軸足として、跳躍しながら
二列目にいた兵士の頭を狙い済ましたかのような、後ろ回し蹴り。
二人とも気絶するかのように崩れ落ちる。
それら一連の所作を あきれた様に眺めながら 
「こいつバケモノかよ」
ヒロシがつぶやいた。

三列目の兵士らは 銃は持って居ない様だった。
あとずさりする 他の兵士達。まだ4、5人は居るようだった。

「銃ッ 銃ッ」

駆け寄ってきたヒロシに 床に転がったままの相手の銃を指差しながら
ゴンが叫ぶ。

「へへ、いただきッ」
ヒロシが拾い上げ 後方の連中に銃口を向けた。。

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駆けつけたローレンスの話では 

「コイツら 奥の原油貯蔵庫 見張りの連中や」

エンジンルームでの無線を聞きつけ飛んできたらしい。

キムが通訳した。

「という事は 他の連中にもワシらの事が・・」
「多分な・・・」

キムがうなずく。

「なーに 機関銃一丁 手に入ったべ」
ヒロシが 拾い上げた機関銃を高々と持ち上げた

「それより 奴ら なぜ急に立ち止まったんだ」
佐々木がヒロシに向かって尋ねた。

「さあ・・・・何故なんすかね」

腹巻を抑えながら ゴンの顔を見つめ方目を閉じた。

「さ、先を急ぎましょう」ゴンが笑いながら言った。

「あーお前ら 何か隠してるな」
竜一が 背後で怒鳴っていた。


外では 風がやみ 満月も出ていたのだが、この時点では 彼らは知らない・・・


     つづく