小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

ミモザの花が散ったあとに 42 最終回 前編

森野は、カクテル雪国を”くいっ”とあおると、誰に言うともなくつぶやいた。

「さてと。。。」
機先を征するように「しっかしまぁ、案山子と書いてカカシと読む。実は私も知りませんでした。はは。」
わざとおどけてみた。だが森野はそれを無視するように「あの日。。。。」とだけつぶやき、またも黙りこんでしまった。

ん!まさかそれほどまでに言いづらい?偶然なんだろうけど、他の客たちのざわめきも一瞬止み、店内は静寂に包まれる。ふと、森野が言いづらいならば、べつに訊かなくてもよいのではないか。そのような思いが頭をよぎる。だが、酔いの影響もあったのだろう。心と裏腹に「で、前村さん。。あ、いや奥様。あの日、案山子で待ってられた?」とつい口に出てしまった。

森野は、「えぇ」と頷き、「あの夜。。。それを知ったのは半年後でした。しかも第三者の口から。。」
「え!半年も。。。ですか」
「えぇ半年。。。」
「課が違ったから会う機会もなく。。。とか?」
「いえあれから、ライセンス事業部が発足し、また机を並べることになってました。。。」
「三田村先輩の言ってた通りの」
「はぃ。。。」
「なのに半年もの間?」
「仕事以外のコト、まともに口を利いてくれませんでした。というか今思えば、ずっと私を避けてました」
「うわまさか。。。あ、タカタとの関係を誤解されて・・・とか」
「あ、いやそんな。。。」そんな単純なことじゃない。とでも言うように森野は頭を振った。

「いったい案山子で何が?」
「案山子では何も。。。。その帰り。。。。」
森野はまた押し黙ってしまった。こちらも黙っていると とうとう覚悟を決めたのか 喋り始めた。
「11月の、なぜか部屋にひとりの時でした。おそらく昼休みだった思います。大阪府警、佐々木と名乗る刑事からの電話を受けたのです」「え。。。」


                     ※

2015年 5月8日 午後2時毎朝テレビ関西支社、第1会議室で行われた『任侠探偵』制作発表会を終え、ロビーに出てみるとヒロシと目が合った。

「あ、来てらしたのですか」ヒロシは自販機前でカップのコーヒを飲んでいた。
「すんません、神戸の案件がなかなか終わらなくて。ついさっき着いたとこっす」
「それはそれは。おかげで無事スタート出来ました」
「しかしまぁ、良かったっすね」
「やはり、監修ヒロシさんの力が大きいです。週刊誌連載時からかなりアドバイスを頂きました」
「いやいやそんなぁ。けど俺としても、なんか嬉しいっす。しっかしまぁ、あの江藤AMPMが主役とは、うちの佐々木が(年齢的に、彼は私のモデルじゃないかぇ)て軽口叩くんですわ。江藤の前評判も良いっすね」
気がかりだった 江藤のコトも ヒロシは心底喜んでくれたようだった。 佐々木所長。。。。。森野夫婦との接点が ”その事件”あいや 事故とよぶべきか。かなり昔にあったとは。

「で、神戸まで仕事ですか、忙しそうで何よりです」
「えまあ、人探しですわ。森野はんの依頼で。。。。あ、つい依頼者の名前出しましたけど、忘れて下さい」
「えぇ心得てます。で、もしや篠原さんを捜しに。。。。」

え、それをなぜ。。。。。。ヒロシはキョトン顔を私に向けた。              

     つづく  (まだ 終わらんのかぃ)

※ 今さら言うまでもありませんが、当記事は フィクションです万が一、実在する、あるいは良く似た、いかなる個人名、団体名、地名、出来ごと、などが出現しようとも 一切の関係はございませんので。あと、ついでに言わせてもらうならば、これは「ミモザの咲く頃に」シリーズの続きでもあります。(-_-;)