OB展での再会について、西崎があれこれ推理を展開。
なるほど、さすがと思わせるものがあった。
だが森島が放ったひと言
「たんなる偶然じゃないと思います」
そして、続きの言葉に
ドンっと胸を揺さぶられた気がした。
「ずーっと思い続け。。。常に行動とかマークしてたのじゃないでしょうか」
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はっ まさかそんな。。。。だが、いやそういえば。。。
酔いの頭で混乱するなか、必死に記憶を呼び戻そうとした。
西崎が追い打ちをかける。「それアリかもね。何年ぶりやったん?」
「4年ぶり」
「ふーん」
だが、西崎は「はあ!?」と驚き「ちょ、ちょっとちょっと。えーと。。。」
何やら指折り数えていたが
「なんかオカシイやん」
「え、どこが」
「あたま整理するわね。まず彼女との最初の出会いは確か1986年?」
「えぇ」
「で、OB展が1990年」
「えぇ」
「それが4年ぶりの再会て、なんかおかしくない?」
「え、どこが?」
「いったい何年のお付き合いだったん?」
「いや、何年というより・・・3、4ヶ月ぐらいかな」
「んなぁ!。。。。」
西崎だけでなく、森島も狐につままれたような顔をしている。
「あ、あのね。最初から確認するわね。。。あミドリ、ワイン。。。。ん、ありがと」
西崎はグイっと一口呑み、
「まず図書館での出会いが9月。。。」
「えぇ」
「そっからたった3、4ヶ月て、そんじゃあ秋から冬だけのお付き合いてこと?」
「えぇ、卒論のとっかかりが9月、で完成が翌1月だったから。。。」
「あ、あのね。卒論のことなど訊いてへん」
「あ、いや卒論で通いつめた図書館の日々。。。」
カタンッ。西崎は音をたてワイングラスをテーブルに置いた。
「し、仕舞いに怒るわよ」
なぜか急に西崎は不機嫌になった。
「ですから、図書館に通いの日が。。。。」
「まさかお付き合いは図書館だけってこと?」
「いや、帰りの喫茶店とか、五反田までの山手線。それと代々木公園。。。月いちぐらいでピクニックの真似ごと」
「んなぁ。。。小学生どうしの交際じゃあるまいし」
「ですから。。。そのう。。。」
確かに。西崎の云う通りかも知れない。
「そのう。。。て何よ」
「代々木の初日」
「えぇ」
「せっかくのデート初日。。。人妻て知らされて・・・」
「でも。。。肩を抱き寄せ『好きです』て云ったんでしょ。。。。
あー。あのあと、未だ訊いてなかったわ、あれから、どーなったん?」
「静かに振りほどき、『ごめんなさい』てだけで。。。」
「そ、それだけ?」
「えぇ」
「それであとは、小学生どうしの・・・・」
「えぇまぁ」
「手をつないだだけ?」
「いやいや、全然。手をつなぐどころか、肩を並べ歩くだけで」
「うそッやん、それ」
「と、とんでもない。彼女と会話だけでも、なんか満たされて。。。」
「ミドリっ、あんたどう思う」
気づけば森島もワインで赤ら顔になっている。
「佐伯社長さんらしいと思います」
「あ、あんたね。。。。」
「先生、素敵だと思いませんか」
「ど、どこがやの」
「たった3ヶ月だけの淡いお付き合い。。。それを30年もの間、心の中に仕舞い込み。。。」
「うぐっ。。。」
西崎にも何か感じるものがあったのか黙り込んでしまった。
が
「最初の話に戻るけど」と顔を上げた。
「えぇ」
「OB展での再会。。。あなたその時、独りやった?」
ぐふッ。
こちら側に、胸を突き上げるものが走った。
それを訊かれると痛い。
「実はその時。。。今の女房が横に。。。」
「え、結婚してたん?」
「いえ式は翌年に。。。」
「彼女、高野さんとの再会はそれ以後。。。」
「えぇ、あれ以来パタリと」
「やはりね」
「え?」
「わからない?」
「えぇまぁ」
すると
「ミドリ。何が素敵なもんか。男てやっぱ鈍感やわ、よー見ときなさい」と言った。
すると森島までもが
「そうですね先生」と言った。
気のせいか、東京タワーの灯りが、霞んで見えた。
つづく
今更ながら、言うまでもありませんが、当シリーズはフィクションです。
従いまして、地名、名前 等はすべて架空のものです。万が一
同姓同名同社の方が居られましても、なんら関わりは御座いません。