小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

続・狂二 波濤編19

「ははッ 見つけたぞぅ・・・」

店の入り口で いきなり響いた声に 一斉に振り返る3人組。

慶一の胸倉をつかんでいた リーダー格の男が 
「チッ サッキのヤツ・・・」
 長身のアラブ系男に英語で 「ローレンスお前に任せる」
目配せをした。

「Yes」眼を輝かせ 入り口に 歩み寄る長身男。




「て、店内で 暴れないで下さい・・」
胸倉を掴まれたままの 慶一が かろうじて声をだす。

「ジャア サッサと コノオトコのイバショヲ ハケ、ソレに、 
イマ オカレテルジョウキョウガ ワカッテイルノカ」
言いながら 慶一の頬に平手打ちを見舞う。

「ひぃッ」

「こらぁッ そこで何しとるんじゃぁ、さっきの礼に来たぞぅ」

竹川組のヒロシが怒鳴る。
怒鳴りながら腹巻きに隠した護身用の警棒をそっと握る。
4140鋼を使用した伸縮性のあるシロモノで 振り下ろせば最長 53cm に伸びる。
1500kgの加重にも耐える奴だ。
「はは・・きやがれ」

ヒュンッ 
ローレンスと呼ばれた2メーター男の長い、いきなりの前蹴りが跳んでくる

おッ と 飛び退きながら 警棒を取り出す。
「おーいッ 携帯屋!これて正当防衛やんなぁ あとで証人になってくれや」

暴対法第三条施行後 組員は一般市民への暴力は固く禁じられて来た。

「久々やのぅ・・・」
警棒を振り下ろす。
シャキーン 金属製の乾いた音が 店内に響き、伸びる。

次ぎ ローレンスの回し蹴りが店内の空気を裂く。
グシャ

警棒でかろうじて受け止める。と同時に

長身男の急所を蹴り上げる。

「ウグッ」尻餅をつくローレンス

「今じゃあッ」頭めがけ 警棒を振り下ろす。 

「ローレン・・・」
それまで慶一の胸倉を掴んだまま 見守っていた アジア系リーダー格が跳んで来、

ローレンスの頭上 間一髪のところで 警棒を掴む。
「フザケタ マネヲ・・」
両手で警棒をつかみながら右足前蹴りがヒロシの胸にヒット。

グワッシャーン 派手に音を立てながらウインドゥケースのガラスを背中で割りながら 倒れるヒロシ

倒れながらも 離さない警棒

警棒を握ったままのリーダー格もヒロシを覆い隠すように倒れこむ。

「はは・・ よー来たのワレッ」

リーダー格の顔面めがけ 頭突きを喰らわす。

「グシャ」鼻血が噴出すリーダー。

「キム ジョナンッ!」

リーダーの代わりに慶一を見張っていたもう一人の男が叫ぶ

「リーダー あのポスター!!」

壁に貼られたポスターを剥がし、駆け寄って来たその男の手には『家島 観光案内』が握られ
 あの“ダダダ下り祭”の神輿を担ぐ男達の勇姿が載っていた。

「ハハ・・・イエジマ!? コノシマに イルノカ」
鼻血をぬぐいながら 立ち上がるリーダー そして
ポケットから無線機を取り出しコールを始めた。


 スキを見て 店長席 机ウラの非常ベルのボタンを押す 慶一

雑居ビル全体に 非常ベルが鳴り響いた。

「おーい まだ俺の礼は まだ終わってないぞぅー」
背中で割ったウインドゥガラスに倒れたままのヒロシの叫びも
ベルの音には かき消されていた・・・

      つづく