小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

続・狂二 波濤編66 最終章後編その五

「おっさんよー、ほんまに乗り込むんけ」タオルで捻りハチマキの若い漁師 小栗が云った。「ああ・・・ここまで有難う」タンカー横壁のタラップに手をかけたまま 寺島が返した。ふと漁船に書かれた 「晴美丸」の文字を思い出し、「晴美丸の晴美て・・・」尋ね…

続・狂二 波濤編65 最終章後編その四

海の彼方に見えていた 黒い島のような影・・・ようやく近づくと 影の正体がくっきり姿を現した。やはり大型の原油タンカーだった。山陰日日新聞 記者 寺島は キャビンの若い漁師に尋ねた。「嵐に巻き込まれたのか、こんな場所で立ち往生かな」「そりゃ違うな…

続・狂二 波濤編64 最終章後編その三

午前1時を回っても テロリストからの連絡は途絶えたままの首相官邸対策本部では 全員眠気が充満していた。「奴らから連絡があったら起こしてくれ」福谷首相が椅子の背もたれに体を預け、うとうと 始めた。それをきっかけに 何人かの大臣連中も テーブルに臥…

続・狂二 波濤編63 最終章後編そのニ

大沢とリ・スンヨクの二人を残して エンジンルームを出、しばらく歩いた時だった。コツンッ コツ コツ・・・複数の軍靴が背後から聞こえたかと思ったその時 バッ バババババーン 機関銃の銃声 同時に足元の鉄板やら側壁を打ち砕いた。「トマレ」片言の日本語…