小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2016-01-01から1年間の記事一覧

そして、池上線15

「その人と、当時どんな気持ちでのお付き合いだったのかとか、 別れのきっかけや、その時の気持ちとか、もし。。。 もし再会できたとしたら、どう言う心の変化があるとか、 洗いざらい正直に報告を、お願いしたいの」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

そして、池上線14

「で、どうやったん?あっちの件」 「は?」 「ほら、思い出捜し。。。」 「あぁ、そっちね。。。。」 探偵事務所の所長らしからぬ、ひょうきんな風貌が浮かんだ。 「まずここに相手さんのお名前を書いていただけますか」 渡されたグリーンの用紙には名前と…

そして、池上線13

「おそらくあの子。。。」 「あはい」 「涙をずっと我慢するだけの、悲惨な人生やったと思うの」 訥々と、そして涙を混じえながら西崎は語り始めたのだった。 横浜で生まれ、育った森島碧だが、幼くして両親は離婚。 三浦半島の小さな漁村、実家に碧を預けた…

そして、池上線12

その日の夕方。 西崎とも代がいきなりやってきたのは、 宅配便の集荷時間を気にしながら、 荷造り・発送仕事をしている時だった。 「あ。」 「何が、あっよ。ちょっとイイ?」 「あ、どうぞどうぞ」 西崎がいきなりやってきた理由。勿論わかっていた。 あれ…

そして、池上線11

何かを秘めたような、その瞳が かッと見開きこちらを見つめていたが みるみる泪が溢れ出し、しまいには声を上げ彼女は泣き出してしまった。 「あ、え。。。。」 どうしたの急に、大丈夫?と、声をかけたが 俯いたまま、かぶりを振るだけだった。 それ以上言…

そして、池上線10

その居酒屋は駅の反対側にある。 だが駅の裏側に出たとき、店の看板の明りは消えていた。 「ん?」 おまけにガラス扉には、何やら張り紙がしてある。 「え、定休日?」 小走りで歩み寄りながら、森島碧を振り返る。 「いえ。。。そんな筈は。。。」 店の前ま…

そして、池上線9

「あ、このチラシ入りの?」 カバンから取り出してみせた。 「えぇ。それを西崎先生が受け取って。。。」 「なんとまあ・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 少し頭が混乱してきた。 「じゃあ君、もともとは探偵事務所のひと?」 森島碧…

そして、池上線8

ブイ~ン。 西崎とも代からの、携帯のマナーモードが震えたのは 雪が谷大塚駅に到着と同時だった。 「ごめん、急用で遅れるの、とりあえず碧をそっち行かせたから」 「え」 森島碧・・・ 「じゃ、終わり次第すぐ駆けつけるから」 「あ、もしもし。。。」 ち…

そして、池上線7

文芸新春社、三好が口にした「やっぱモリシマミドリ。。。」 の言葉に、思わず 「もしや西崎事務所の新人?」と口に出た。 三好は 「え。部長、ご存じなのですか」と訊いてきた。 「ま、まあ。。。立ち話も何だから。。」 部屋に入るよう勧めたが、三好は時…

そして、池上線6

パサっ。。 書類の束でも滑り落ちたかの音ではっと目覚める。 視線が捉えたのは、自宅の寝室でなく、雑然とした仕事場の光景に しばし呆然となる。 この状況は・・・・ あ、昨夜・・・ 下読み仕事のため、やむなくオフィスに舞い戻り。。。 いつのまにか原稿…

そして、池上線5

午後11時40分。。。 ライトアップの消灯まで、まだ余裕が。。。 改札を出た時、時計の針を確認するや、それまでの急ぎ足をやめた。 久しぶりの酒の席だった。。。 40代では少々の無理も効いたが、50を超えた今とあっては、 少々こたえるものがある。…

そして、池上線4

「じゃあお願い。さっそく依頼に行って欲しいの。佐伯社長の 想い出探し。。。。」 「はあ!?」 「はあ。。。それはないでしょ」 少しトゲのある西崎の言葉だったが、眼は笑っている。 「え、まぁ。ですが・・・・・」 いきなり初恋の相手捜しと云われても…

そして、池上線3

西崎はチラシを受け取るや、「みどりも座ってなさい」と少しからだをずらし、 ソファーを空けた。 「え。。」と、みどりと呼ばれた新人は、一瞬、躊躇していたが 「失礼します」と西崎の横に座った。 視線が合うとピョコンと頭を下げた。 名刺を差し出し「あ…

我が国の不都合な真実

先週、久々にジュンク堂に行ったとき、偶然に見つけた本。1999(平成11年)に書かれ、2050年には、没落するであろう日本を予測した本なのである。当時はバブル崩壊後の低迷を極めた、真っただ中とはいえ、そりゃあないだろう的な悲観論。。。と、言…

そして、池上線2

西崎とも代の自宅兼仕事場は、雪が谷大塚駅の改札を出て東方向。駅前は賑やかな商業ビルが立ち並ぶも、 ひとつ通りを行けば、まずまずの静かな住宅街にあった。どの邸宅も植込みを充実させ、季節の花々を溢れんばかりに咲かせている。 そして、少し先には、…

そして、池上線1

お手伝い致します あなたの想い出探し。 例えば・・・・初恋の人に 逢ってみたいと思いませんか。 忙しいあなたに代わって、想い出探しの お手伝い。。。 秘密厳守 プチ探偵事務所 大田区南雪谷1ー※※ー※ TEL03 ※※※※ー※※※※ ・・・・・・・・・・・・・…

シャッター通りを解消する方法

とある本 (下流老人と幸福老人:光文社新書、三浦展著)に書かれてあって あ、成る程! と膝を打ったのである。 ショップを開きたい、やる気やアイデアはあっても資金が無い そういう若者達に格安で提供すれば良いのだ。すんなり すべて解消には繋がらない…

やっぱなぁ 簡単に出来るワケないッしょ

ついつい 手にとってしまった一年前。(東京以外で、1人で年商1億円のネットビジネスをつくる方法)朝日新聞出版 中村あきら 著 おおよそ一年ぶりに読み直してみての感想なんだけど、 よくある、この手のノウハウ本(本を導線に高額セミナーとかの誘導や売…

おやじの本棚

ここ数日、古本道場やら、文学が好き とやらを読みふけって居て やたらと、親父の本棚を思い出してしまった。 本棚と言っても立派なもんじゃなく(押し入れ中の、三段ボックス)五味康祐とか黒岩重吾、野坂アキユキ(漢字変換できない)そしてなぜだか、五木…

夏葉社さん、つながりで買った 2

忘れた頃に、またまたまた夏葉社さんネタやけど、今回は エイやあ~と二冊同時買いなのだ。 ひとつは 岡崎武志(角田光代氏との共著)古本道場。岡崎氏は、なんと前回紹介の山本善行氏と親友の間柄。ともに古本の世界をこよなく愛する(文学道)の達人なので…

歌を聴いて発想した物語もある

2014年1月からスタートさせた「ミモザの花の散ったあとに」は言うまでもなく 「ミモザの花が咲く頃」 の続編なのですが、最初はまったく予定になかったのである。 ところが2013年の12月だったと思う。NHKのBS歌番組で、とある歌を聴き 突如 ひら…

職業としての宗教

今、読みかけている本、「職業としての政治」いやはや 簡単なようで、少々難解。なかなか前へ進まない。なんでまた こんな本を買ってしまったのだろうと、表紙をあらためて眺めていると政治の文字を 宗教に置き換えても成り立つ!! ことを発見したのだった…