小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その30

梅雨入りが遅かった分、6月末から7月にかけ、連日のように雨が続いていた。じめじめと、湿気が高い割に気温そのものは案外低かったりする。つい扇風機の風や、エアコンの冷気に頼り過ぎ、風邪など体調を崩しやすいのもこの時期だ。ジャンニ・ビアンコとの…

ミモザの咲く頃に その29

結局、そのオモチャのピアノは、妹の部屋の押し入れの一番奥、さらに一番下にあった。最初、妹の部屋からスタートしたところ見つけられず、「もしかしたら両親の部屋かも知れない」妹が言いだした。両親の部屋を皮切りに、あちこちの部屋の押入れを順に探し…

ミモザの咲く頃に その28

長沢雅恵からの便せんを持ったまま、しばらくは呆然と立ち尽くしていた。田代ひとみ、前村加奈子、そして雅恵の顔、。。。と映画のフラッシュバックのように浮かぶ。手紙にあった「教育実習」の文字に、ずっと課題だったあの芳香の記憶が鮮明に蘇った。香り…

ミモザの咲く頃に その27

実にドラマチックで、めまぐるしい一週間だった。月曜日、雨の琵琶湖行きに始まり、翌火曜は会社役員に対するプレゼンテーション会議。そしてなんと言っても木曜日、日帰りとはいえ初の東京出張、東京支社で行われたジャンニ・ビワンコとの契約の調印。 入社…