小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

続・狂二 波濤編 6

三月も半ばを過ぎると家島の海に穏やかな陽光が、 降り注いでいた。 朝晩は冷え込むものの 昼間の海水温は暖かだった。 時おり跳ね上がる波しぶきでも、ほてった頬に心地よい。 遠くに見える四国の山あいの稜線が 青く煙っている。 空は夏の空の様に どこま…

続・狂二 波濤編 5

「さすが、高級車は乗り心地が違うのぉ、サヤカ」 秀治が大きくのけぞりながら足を組みかえる。その度、履いている長靴がボコボコ音をたてる。 「う、うん・・・」 黒塗りのベンツ、後席の真ん中で 小さくなりながらサヤカが頷く。 「しかしまあ、親分さん …

続・狂二 波濤編 4

まず最初にジャージ姿の男が 軽トラ、運転席の横に立った。 金のブレスレッド、同じく金のネックレスをぶら下げ、ジャラジャラ鳴らせた。 「おう、じいさんこのボロトラック邪魔なんや、なんとかしたれ」 「それがニイチャン、動きまへんねん、ガス欠だ」 顔…