小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

狂二4 NINE.sec その35

スタートでつまずいてしまい、大きく出遅れた河本浩二。 だが体勢を立て直すや、陸上部初日に見せたあの怒濤の猛スパートをかけた。 耳を澄ますと、他の選手たちのスパイク音に比較し河本の場合、明らかに特徴があった。 一瞬の雨で少し湿ったトラックだった…

狂二4 NINE.sec その34

朝、私たちが競技場に到着した段階では抜けるような青空が広がっていた。 昼近くに曇空が広がってはいたものの、午後になると一転、雨もよいの空になるだろうとは 一体誰が予想しただろうか。。。天気予報でさえ。。。 河本浩二が予選でいきなり男子100メ…

狂二4 NINE.sec その33

たった1時間足らずでも、周囲の風景が一変するコトだってある。 頭の中では分かっていたつもりでも、いざその光景を目の当たりにした瞬間、私は目眩さえ覚えた。 食堂を出た瞬間、爆音が聞こえ思わず見上げた。 爆音の主、ヘリコプターが競技場上空を舐める…

狂二4 NINE.sec その32

2013年5月19日は、わが国にとって歴史的な記録が刻まれた日だ。 とうとう陸上男子100メートル、10秒の壁を破ったのだった。 関西実業団陸上選手権大会が行われた会場は騒然となり異様な興奮に包まれた。 三浦教授が当初考えたもくろみでは、9秒…

狂二4 NINE.sec その31

関西実業団陸上競技会が開催された尼崎陸上競技場。 私たちが到着した朝の早い時間帯では閑散としていたが、五月晴れの青空が寂しさを帳消しにしていた。だが時間が経つにつれ観客席は賑わいを見せ始め、どう言うわけかそれに呼応するように雲も広がりを見せ…