小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

そして、池上線25

高野さんは、眩しそうに目を細め、車窓を眺めていた。 独り言のような喋り方だった。 だから思わず 「良いんですか」 確かめるように訊いた。 高野さんは車窓を眺めたまま、少しの沈黙があった。 「弁当でも作ろうか」 小鳥のさえずりに聴こえた気がした。 ―…

そして、池上線24

そのあとしばらくは写真談義に花が咲いていたが、急に社長は立ち上がった。 内線電話を呼び出すや 「あ坂井君、さっきのは取り消し。佐伯社長んとこ優先。。。 うんそう、風の系譜社さん。いい?必ずだよ」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「…

そして、池上線23

風景写真のカレンダー。もちろん珍しくも何ともなく、 むしろ写真のないカレンダーを探す方が苦労するだろう。 だが、代々木公園の写真となれば話はべつだ。 あるようで、無かった代々木公園のカレンダー。 社長はまだ戻って来そうにもない。おもむろに起ち…

そして、池上線22

西崎とも代からの電話は、いつも唐突で、何かと騒動モノだ。 それもようやく慣れた頃に独立をし、彼女との縁もついに終わりだな。 ふと脳裏をかすった時に、今回の思いもよらぬ初恋さがしの仕事。 独立し二年目、ようやく出版社運営に慣れたとはいえ、 何か…