小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ミモザの咲く頃に その34

ようやく国光常務との電話が終わった。 (明日はいつも通り出社やから心配には及ばない。もちろんピアノも予定どおり伺う。美央さんに宜しく伝えておいてくれ) の言葉にひと安心した。 しかしまあ、あの田代さんが常務の娘だったとは。。。 あ、と再び中学…

雪国

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。 ご存知、川端康成著「雪国」の あまりにも有名な書き出し部分である。 あまりにも有名な 冒頭部分だけが、もの心ついた時から頭に刷り込まれ、一度だって読んだ事も無いのに 読んだ気になっていた。 先日、本屋…

ミモザの咲く頃に その33

二週間ぶりの石坂邸。。 垣根に咲いていたはずのアジサイ。花びらこそ散ってはいたが、 葉は健在だった。雨水をたっぷり吸いあげ艶やかな緑の光沢を放っている。夕方とは云え雨上がりの陽は高く、その光を受けきらきらと宝石をまぶしたかの如く輝いていた。…

ミモザの咲く頃に その32

窓の向こうに 朝が来る愛は醒めて 水になるまわれ涙を 散りばめて あなたは まぼろし・・・・・ / 里村龍一 作詞、浜 圭介 作曲、島倉千代子 唄「夢飾り」より耳をつんざく電子音が断続的に鳴っている。一体なんだぁ?首を捻った向こうに目覚まし時計があっ…

ミモザの咲く頃に その31

「お待たせ」 息せき切って、駆けつけてきた前村は、 雨の中を走って来たのだろう。座敷に上がり込むやへたり込み、背中を大きく波うたせ息を整えた。 「まあまあ、そないに息せき切って。走ってきたん?とりあえず”お冷や”どうぞ」 「ありがとうカズエさん…