小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

狂二4 NINE.sec その13

河本の陸上練習初日、50メートル走の計測が行われた。 「え、凄すぎる」 三好が叫んだ。 大きく出遅れたスタートに直視出来ず、つい俯いてしまっていたが、その声にえ、と顔を上げた。 いつの間にか河本はスタートでまごついたものの、グングン加速するや…

狂二4 NINE.sec その12

「鈴木、全員集合や」 監督の声にマネージャーの鈴木がホイッスルを吹き、部員たちを召集させた。 監督の山根は部員たちを前に 「寺島さんに三好さん、そして河本君、どうぞ前へ」と云った。 思いもよらない呼びかけに、あわてて三好と一歩前に出、監督に並…

狂二4 NINE.sec その11

私の顔を見つけるなり河本はニッコリ笑うや頭を下げ、駆け寄った。 「先日はどうも」 「いよいよですね、頑張ってください」 「ありがとうっす」他にもなにか云いかけたが他の部員たちの手前もあったのだろう、じゃあと言い残し、部員たちの輪に戻った。 陸…

狂二4 NINE.sec その10

大阪の地形は縦に長く延びる。そのやや北部に位置する丘陵地帯に北摂総合大学専用グラウンドがあった。 1周400m×9レーンを擁する全天候型ウレタン舗装の本格的なトラックと、フィールドは天然芝を敷き詰めた全天候型のモノ。 第1種公認の陸上競技場に決し…

狂二4 NINE.sec その9

(一年ほど陸上への挑戦に会社を留守にしたい) 河本の言葉に、従業員たちから猛反発の声で会議室は騒然となった。 そのとき 「あのーぅよろしいですか。皆さん」 と 麗花が立ち上がった。 「麗さんも当然反対やなぁ」後ろから声が飛んだ。 だが彼女は、ひる…