小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2007-01-01から1年間の記事一覧

狂二 エピローグ

その後 府警の捜査員が倉庫の片隅で気絶し倒れていた当事件の首謀者・キムドンゴン 【(28歳)元北朝鮮の秘密工作員現在は 国際テロ組織アレカイーナの亜細亜局長】の身柄を確保した。全身数箇所に打撲の跡があるものの、命に別状はない模様。取調べを進め…

狂二 最終章 後編

作業棟で軟禁状態にあったパート従業員たちのとりあえずの解放に成功したが、無事に帰宅させるまでは 勿論安心は出来ない。とりあえず裏門から帰宅させるべく、裏門で見張る連中をなんとかせねばならない。他の連中も 即、駆けつけてもおかしくない状況には…

狂二 最終章 中編

「どうする?」狂二が竜一に聞く。「とりあえず信じるしかないやろ、今の状況じゃ少しでも味方が欲しい。ま、嘘なら嘘でこいつ等人質に利用出来るしな」「よし、決まり」大きくうなづくと同時に「おい、テコンドー野郎 銃はとりあえず持っておけ、今から作業…

狂二 最終章 前編

非常階段を降りる前に 狂二は作業ズボンの裾をめくり上げ鉛の重りを両足首から取り外した。「お前 そんなの付けてたんか? ドラゴンボールの悟空かよ」「よしッ これで少しは身軽に・・・」「道理で動きが少し鈍いと 思ったぜ」竜一があきれながらもつぶやい…

狂二 22

最初にして 最後の前回までの あらすじ・・・人から狂二と呼ばれ、恐れられていたコージは、ある夏の夜 絡んで来たグループのリーダーをたった一撃で倒す。が、そのリーダーは狂二が勤める冷蔵冷凍倉庫会社が所属するグループ会社“田嶋総業”の社長の息子、竜…

狂二 21

裏門の壁を“ぶっ壊し”突入してきたダンプ。そこから完全武装の乱入者達を見つけた二人は一瞬で氷つく・・・「まじっかよ、とりあえず電話だ!」猛ダッシュで狂二が事務所に駆ける。「おーい 置いていくなよ」竜一も必死の形相で追いかける。電話機の受話器を…

狂二 20

じゃあ、留守を頼む・・・そういい残す、坂本社長を二人して見送った直ぐだった。振り向きざま竜一の前蹴りが狂二の腹にめり込むぐはッ。。下腹を押さえながら、後ずさりをする。「ちょ、ちょい 待てや、若ボン・・」「誰が若ボンや、会いたかったぜ」言いな…

狂二 19

築港冷凍倉庫裏の岸壁に接岸するや、坂本社長は手馴れたロープワークでクルーザーを係留した。 胸ポケットから携帯を取り出し、中岡社長を呼び出す。「・・・・・・・・・・・・・・・」「ん?おかしいな」深夜になるかもだが、竜一を送り届け、その後中岡社…

狂二 18

大阪湾の波間に 木屑やら発泡スチロールのかけらが揺らめき、静かに漂っていた。 確か、夜中だと言うのに 雲間から覗いた太陽の光が沖を照らしている。 その沖の遥か彼方を泳ぐ 狂二の背中が見えた。どこまで泳ぐと言うの・・・もう冬なのに・・・・・・・・…

狂二 17

11月の声を聞き 古庄多美恵は15日の狂二の誕生日プレゼントを買うべく 携帯ショップに足を運んだ。「へー 11月15日が誕生日なの?龍馬の命日やん」「そんなに、あれなんかな オカンもその日に生んだ事を、ことの他喜んでいた・・・」誕生日を聞き出…

狂二 16

「中岡君 彼と二人だけで話がしたい、いいかね?」「二人だけ・・・と申しましても。。。常務」中岡は言葉を選びながら詰まった。どことなく困惑が現れていた。「コージも バイトとは居え、ウチにとって必要な戦力ですので・・」苦渋の表情でつぶやく中岡社…

狂二 15

その後も、高城は中岡社長の説明を受けながら小一時間、構内を見て回ったが、“うーむ・・・”と唸りっぱなしだった。外から見ただけでは気付かなかったが、構内の作業場は見事なまでに整理整頓が行き渡り、チリひとつ見なかった。ともすれば乱雑になりがちな …

狂二 14

ハイヤーのカーラジオスピーカーから昨夜行なわれたナイターの結果が流れていた。「あー!また勝ちよった。。。タイガース」スポーツニュースに続く、運転手の声で 高城は目が覚めた。車外を見ると安治川に架かる橋を渡っていた。「お。もう直ぐ築港か・・・…

狂二 13

田嶋総業 板垣こと高城常務はちらッと 横の田嶋社長に目をやった。ハイヤーは大阪ミナミの繁華街を抜け出し、四ツ橋筋を北上。四ツ橋筋 西本町から左折体制になり、中央大通りに差し掛かろうとしていた。あと10分前後で築港に着く。が、先ほどまで民自党幹…

狂二 12

教育大時代からの親友、三浦の向こう側にファミレスの窓を通して スーパー“エオン”のビルが見える。 ラストサマーバーゲン実施中―――と、大書きされた垂れ幕が風に揺れていた。コンビニの常連客 狂二とより親しく口を聞ける仲になったのはスーパー“エオン”食…

狂二 11

和歌山県白浜にある 田嶋家別荘で、退院後の静養を兼ねていた竜一は“暇”を持て余していた。しばらくはレスリング部の仲間達も駆けつけ一緒に過ごしていたが、九月の声を聞き「じゃあ主将 そろそろ自分らは一足先に帰りますわ」と、皆ぞろぞろ帰ってしまった…

狂二 10

9月に入った大阪。しかし今年の残暑は例年以上に厳しいものがあった。例年では 昼間は猛暑に照りつけられた市内でも朝晩は涼しい風が吹く。が今年の場合、最低気温が25度を下がらない熱帯夜が続いていた。「暑くなるのが遅れた分、秋の訪れも やはり遅い…

狂二 9

その後狂二はJR環状線、鶴橋駅から電車に飛び乗り弁天町で降りた。 目の前には国道43号線。北への尼崎、神戸方面。南への和歌山とを結ぶ幹線道路。北に少し歩くと安治川沿いの倉庫街。夜でも大型トラック中心に行きかう国道。ディーゼルの排気のガスと騒…

狂二 8

ビュンッ・・・それは初めて体験する強烈な廻し蹴りだった。咄嗟にガードした両の腕がしばらくは『ジンジン』唸りを上げ痺れた。思わずよろめきかかった。が、下腹にグッと力を入れかろうじてこらえた。『・・・・ッ!』振り向きざまに強烈な廻し蹴りをよこ…

狂二 7

何者かの尾行に気付いた狂二は、背中と聴覚に全意識を集中させた。足音を数え、人数を確認する。・・・・・・・・・・・・・・今の所 3人。。。『けッ 中途半端なグループめ』心で毒づく。次に 足音のリズムで相手の“能力”を推し量る。武道または格闘技の心…

狂二 6

狂二の1日は 午前9時に終り(就寝)、午後4時に始まる(起床)。と言う昼夜逆転の生活。中学を卒業し、早や3年。まだ18の誕生日を迎えて居ないから、17歳の狂二にとって 普通なら音を上げる夜勤生活。。----築港冷凍倉庫------ 時給100…

狂二 5

お盆休み中の大阪御堂筋は、ガランとしていた。秋には小金色に染まる銀杏並木も、夏、真っ盛りの今では青々と若葉が茂り、ちょっとした森林気分を味わえる。が、少し葉影を逸れると容赦ない都会の太陽が照りつける。道路はガラスキでも、当然のように暑い。…

狂二 4

竜一に、『板垣』と呼ばれた男、本名 高城剛志。日本拳法6段の猛者でもある。若い頃(昭和39年、東京オリンピックの年)一旗挙げようと九州から上京し、結局なにも出来ぬまま、大阪へ流れ着いた。 あてもなく街をぶらついている頃、田嶋社長に声かけられ…

狂二 3

店内に入って来た青年を見た多美恵は一緒に棚入れ作業をしていた新人のバイトに残りを任せ、慌ててレジに向かった。 レジ台から、それとなく注視する。ま、彼の行動は初めて見かけた時から、全くと言って同一だ。 お弁当売り場だけで、終わる場合がほとんど…

狂二 2

コンビニエンスストア “レーソン”アルバイト店員古庄多美恵38歳は入荷されたばかりの商品の 棚入れ作業をしながら、ちらッ とレジカウンター奥の掛け時計を見た。 午前5時10分・・・・・『もうすぐ あの子がやって来る。。。』今はコンビニの店員をして…

狂二 1

狂二・・・・と何時の頃から呼ばれ始めたのか 忘れた。いやガッコ行ってた頃からだから、もう3年か。。。 蒸し暑い 夜の街を “獲物”を探しながら狂二こと、河本浩二は 氷の眼をしながら歩いていた。獲物・・・・ 簡単に見つかりそうで なかなか見つからない…