小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2013-11-01から1ヶ月間の記事一覧

狂二4 NINE.sec その48

5月末から6月にかけ、私の周辺でも急に慌ただしさを見せ始めた。 またもや、文芸新春社編集部三好菜緒子からの電話が始まりだった。 「寺島さん、来週上京されますよね。ジャパン陸上」 「えぇもちろん。今のところ8日、午前中を予定してます」 河本の世…

狂二4 NINE.sec その47

「先日はありがとうございました。おかげさまで記者会見も無事」 「あいえ、見事な司会ぶりでした。それより就活中って?」 「えぇまぁ・・・」 一週間ぶりに見る鈴木圭子の笑顔だった。ダークグレイのスーツが良く似合っている。珍しくアップにまとめたヘア…

狂二4 NINE.sec その46

「今の、もしかしてヒロシから?」 携帯フリップを閉じるや河本が訊いてきた。 「え、えぇ。なぜそれを」 「1時半に迎えの約束を。例のオヤジの件です」 え?と袖をめくった。腕時計の針はもうすぐ1時半になろうとしていた。あれから2時間近くも話込んで…

狂二4 NINE.sec その45

「将来、マラソンでも世界記録に挑戦とか」 つい口に出てしまったが、もちろん軽い冗談のつもりだった。 だが、 「あ、三浦教授。。。。」 私の言葉に山根は反応し、三浦顧問の名前を口にした。 たしかあれは正月。三浦顧問と山根とが言い争いを演じたことを…

狂二4 NINE.sec その44

ようやく河本が顔を上げた。 「森野さん、契約は1年、あいや半年。これでどうでしょう。もちろん契約料もその分割り引いてもらって結構です。いや是非そうして下さい。その代わり。。。」 言いにくいのか言葉が詰まった。 「その代わり、何でしょう」森野が…