小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

そして、池上線19

「バスケ、入部の初日で辞めた。んで伝説的な笑い者に」

「あー。思い出した。それ。片思いだった子に根性なして笑われ、バカにされたとか。

まさかそれ大学まで引っ張ってたん?」

「うん。まあ」

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そう、その頃の私は、一種の女性恐怖症とも言うべく劣等感の塊だったのだ。

地元香川県、ほとんどは県立の男女共学校に進学する。

だが、親に無理をさせ、唯一あった某私立大学の附属男子校に進学したのだった。

そこで親友となったMと学部は違えど、東京で共同生活を始めたのだった。

その後の私の人生を変え。。。いや決定させることになった文学部への進学。

最初から文学に興味があったわけじゃない。

進学推薦の入試科目が国語と英語のたったの2科目。

数学がまるでダメだった私が、唯一選択できる学部だったにすぎない。。。

元々は、理工系専門校として誕生した大学。文学部の歴史が浅く、

総合大学のクセに女子の姿はまばら。

大学まで引きずっていた【女性恐怖症】な私として、

実に理想的な居心地の良い環境だったのも事実。

けれど、その恐怖症も徐々に薄れはじめ・・・

いやむしろ

それまでの反動からか、女性に対して猛烈な意識が芽生え出し。。。

ちょうどそんな頃に高野さんとの出逢いがあったのだ。

再度の借り出しからも、意識はすれど、会話もなく・・・

そんなある日のことだった。

その日は何かの用事で図書館には寄らず、帰宅途中、駅の構内だった。

全然気づかず追い越したらしい。

ポンポンと背中を叩かれ、振り向くと高野さんの笑顔。

「あ」

その後の会話は覚えていない。

けれど、「3000系、めちゃ古い車両なの」

3000系

最初、その言葉の意味がわからず、だから よけい印象的だった。。。

つづく

今更ながら、言うまでもありませんが、当シリーズはフィクションです。 従いまして、地名、名前 等はすべて架空のものです。万が一 同姓同名同社の方が居られましても、なんら関わりは御座いません。