森島碧。。。。
明日は来るのだろうか。そんなことを考えていた。
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「。。。。。。。。。。とまあ、以上が高野しおりこと、吉岡紫織さまに関する調査報告でございます。」
馬渕の報告が終わると同時だった。
西崎とも代は、ふぅーと、ため息を大きくつき、
「しっかしまぁ、想定外と云えばまったくの予想外。こんな人生の選択てあるもんやね」
言うや老眼鏡を外し、こめかみを指圧。静かに馬渕の分厚い報告書ファイルを閉じた。
A4レポート用紙100枚ほどの報告書。たった1日でこれをまとめた力量は凄い。
なにげに時計に目が行った。
午後6時半。。
結局、森島は来なかった。まあ当然と云えば当然だろうけど、
なんとなく寂しいものがある。。。
「え?ちょっとちょっと」
「ん?何か」
「ん何かや、ないよ。その顔」
「顔?」
「無表情もええとこやん」
「そうかな?」
「そうかなて、あんね佐伯さん」
「はい?」
「さっきの報告書。驚かない?まるで前々から知ってたような顔つき」
あッ。しまった。
思わず馬渕と目を合わせた。馬渕も顔をしかめ、必死で顔を左右に振った。
(了解。昨夜のことは当分・・・・ですね)
「ちょお、ふたりで何を眼くばせしてんの」
西崎は、私と馬渕、交互に見比べ、最後は馬渕を睨みつけた。
「馬渕さん、あなたも何か隠してる?」
「いや、わ私は何も。。。ご誤解ですよ誤解」
馬渕が必死になればなるほど、笑いがこみ上げそうになる。
(絶対、愛川欽也)
そして、やはり。。。
この純情男のため、ひと肌脱いでやりたい気持ちが高ぶってくる。
「そんなことないでしょ。マブち。。。
さらに問い詰めようとしたとき、タイミングよく西崎の携帯マナーモードが机の上で震えた。
「碧。あとで掛け直すから。。。。えッ連載が決定?。。。うん6月号。。。。了解。
えタイトル?。。。。メモは良い?。。。じゃあ言うね。平仮名で『おもひでさがし』。。。
うん、いじゃなく”ひ”。わかった?。。。。そう。OK。土屋部長にも宜しく。じゃあね」
携帯のフラップを閉じるや、西崎は顔をくしゃくしゃにさせ、ヤッターと叫んだ。
「土屋部長。。。て、文藝新春?」
すると、
「そう、佐伯部長いや佐伯社長の元部下、土屋さん」
「で、ひょっとして今回の、初恋捜し。。。。題材の?」
西崎は満面の笑顔で
「そうに決まってるじゃん」
「ほーう。それはそれは。。。。」
意外と云えば意外だった。連載の決定が、こんなにも嬉しいとは。
西崎とも代クラスになれば、反対に文芸誌の方から依頼が行っていた筈。
まさか編集方針の変更?
すると
「佐伯さん、ここんとこNGの連続だったの」
「て、何が?」
「新春から」
「まさか。。。」
ふと、先生を助けてください。。。大スランプなんです。。。
いつしか森島碧の言ったセリフを思い出した。
「まっ。とりあえず、3人で祝杯しません?」
嬉しそうに馬渕が言った。
(あっ 約束違うだろ)
まっ良いか。。。
つづく
今更ながら、言うまでもありませんが、当シリーズはフィクションです。 従いまして、地名、名前 等はすべて架空のものです。万が一 同姓同名同社の方が居られましても、なんら関わりは御座いません。