小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

そして、池上線60

 森島碧。。。。

明日は来るのだろうか。そんなことを考えていた。

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「。。。。。。。。。。とまあ、以上が高野しおりこと、吉岡紫織さまに関する調査報告でございます。」

馬渕の報告が終わると同時だった。

西崎とも代は、ふぅーと、ため息を大きくつき、

「しっかしまぁ、想定外と云えばまったくの予想外。こんな人生の選択てあるもんやね」

言うや老眼鏡を外し、こめかみを指圧。静かに馬渕の分厚い報告書ファイルを閉じた。

A4レポート用紙100枚ほどの報告書。たった1日でこれをまとめた力量は凄い。

なにげに時計に目が行った。

 午後6時半。。

結局、森島は来なかった。まあ当然と云えば当然だろうけど、

なんとなく寂しいものがある。。。

「え?ちょっとちょっと」

「ん?何か」

「ん何かや、ないよ。その顔」

「顔?」

「無表情もええとこやん」

「そうかな?」

「そうかなて、あんね佐伯さん」

「はい?」

「さっきの報告書。驚かない?まるで前々から知ってたような顔つき」

あッ。しまった。

思わず馬渕と目を合わせた。馬渕も顔をしかめ、必死で顔を左右に振った。

(了解。昨夜のことは当分・・・・ですね)

「ちょお、ふたりで何を眼くばせしてんの」

西崎は、私と馬渕、交互に見比べ、最後は馬渕を睨みつけた。

「馬渕さん、あなたも何か隠してる?」

「いや、わ私は何も。。。ご誤解ですよ誤解」

馬渕が必死になればなるほど、笑いがこみ上げそうになる。

(絶対、愛川欽也

そして、やはり。。。

この純情男のため、ひと肌脱いでやりたい気持ちが高ぶってくる。

「そんなことないでしょ。マブち。。。

さらに問い詰めようとしたとき、タイミングよく西崎の携帯マナーモードが机の上で震えた。

「碧。あとで掛け直すから。。。。えッ連載が決定?。。。うん6月号。。。。了解。

えタイトル?。。。。メモは良い?。。。じゃあ言うね。平仮名で『おもひでさがし』。。。

うん、いじゃなく”ひ”。わかった?。。。。そう。OK。土屋部長にも宜しく。じゃあね」

携帯のフラップを閉じるや、西崎は顔をくしゃくしゃにさせ、ヤッターと叫んだ。

「土屋部長。。。て、文藝新春?」

すると、

「そう、佐伯部長いや佐伯社長の元部下、土屋さん」

「で、ひょっとして今回の、初恋捜し。。。。題材の?」

西崎は満面の笑顔で

「そうに決まってるじゃん」

「ほーう。それはそれは。。。。」

意外と云えば意外だった。連載の決定が、こんなにも嬉しいとは。

西崎とも代クラスになれば、反対に文芸誌の方から依頼が行っていた筈。

まさか編集方針の変更?

すると

「佐伯さん、ここんとこNGの連続だったの」

「て、何が?」

「新春から」

「まさか。。。」

ふと、先生を助けてください。。。大スランプなんです。。。

いつしか森島碧の言ったセリフを思い出した。

「まっ。とりあえず、3人で祝杯しません?」

嬉しそうに馬渕が言った。

(あっ 約束違うだろ)

このあと、馬渕と荻窪バーに飲みに行く事になっていた。

まっ良いか。。。

  つづく       

 

 

今更ながら、言うまでもありませんが、当シリーズはフィクションです。 従いまして、地名、名前 等はすべて架空のものです。万が一 同姓同名同社の方が居られましても、なんら関わりは御座いません。