小説の杜

旧 kazami-k 小説の杜から越して来ました

2017-01-01から1年間の記事一覧

そして、池上線35

「ミドリ。何が素敵なもんか。男てやっぱ鈍感やわ、よー見ときなさい」と言った。 すると森島までもが 「そうですね先生」と言った。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ちょっとえぇか、佐伯ぃッ」 酔いがすっ…

そして、池上線34

OB展での再会について、西崎があれこれ推理を展開。 なるほど、さすがと思わせるものがあった。 だが森島が放ったひと言 「たんなる偶然じゃないと思います」 そして、続きの言葉に ドンっと胸を揺さぶられた気がした。 「ずーっと思い続け。。。常に行動と…

そして、池上線33

高野さんからのハガキを眺めていた時、 「店、探すの苦労したわー」 二人とも両手にレジ袋を下げ西崎と森島が戻ってきた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ あ、どうも。一瞬うろたえたものの、ま、良いかと、ハガキはそのままに…

そして、池上線32

馬渕事務所からの報告書、中間報告とはいえ、肝心の部分が黒塗りにされてあった。 報告書を読みたくて、すっ飛んで来た西崎とも代 「今から訊きに行く?」 の声に、一同腰を上げようとした時、突然森島が声を上げた。 「今 ライトアップしました、東京タワー…

そして、池上線31

「どうしたん。急に黙って」 西崎の言葉にはッと顔を上げる。 直ぐには答えられず、No.7の住民票を見せぽつりと言った。 「今、ここらしい。多分彼女の実家。丹後半島。京都の。。。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「へー丹…

そして、池上線30

森島の携帯が振動した。 あ、先生からです。 「今、芝公園駅改札出たとこらしいです」 「な、なんとまぁ。。。。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「ごめん、来ちゃった」 「やあ・・・ま、とりあえず中へ」 「…

そして、池上線29

「西崎、こっち来れないかなぁ。」 馬渕探偵事務所からの報告を、西崎も呼んで一緒に見ないか。 森島に提案すると 「うわーそれ。最高」 はしゃぐように言うや、携帯を取り出した。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

そして、池上線28

「これて、逆も真なりですよね」 「ほーう。例えば?」 「どえらい時を過ぎたなら、やがては幸福が。。。て」 きっぱり言い切るや、涙で光った瞳で私を見つめた。 あ。この瞳。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 西崎とも代の代理。。。あ、い…

そして、池上線27

「ぜ~んぜん。あ、それよりミドリ、そっちに向かわせたから」 「は!?」 「彼女の消息らしきもの、なにか確認したいことがあるそうなの」 「え、なぜ彼女が」 「馬渕事務所からの電話、あなたの携帯に通じないらしいけど、まさか拒否してない?」 「あ!」…

そして、池上線26

その日は、そこいらの女優にも引けを取らない完璧メークだった。 なぜかその顔が、より寂しく、哀しげにも感じられた。 「佐伯くん」 「は、はい」 「私、キミより一回りも歳上。結婚5年目なの」 「は、はあ!?」 ――――――――――――――――――――――――――――――― 残暑の…

そして、池上線25

高野さんは、眩しそうに目を細め、車窓を眺めていた。 独り言のような喋り方だった。 だから思わず 「良いんですか」 確かめるように訊いた。 高野さんは車窓を眺めたまま、少しの沈黙があった。 「弁当でも作ろうか」 小鳥のさえずりに聴こえた気がした。 ―…

そして、池上線24

そのあとしばらくは写真談義に花が咲いていたが、急に社長は立ち上がった。 内線電話を呼び出すや 「あ坂井君、さっきのは取り消し。佐伯社長んとこ優先。。。 うんそう、風の系譜社さん。いい?必ずだよ」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「…

そして、池上線23

風景写真のカレンダー。もちろん珍しくも何ともなく、 むしろ写真のないカレンダーを探す方が苦労するだろう。 だが、代々木公園の写真となれば話はべつだ。 あるようで、無かった代々木公園のカレンダー。 社長はまだ戻って来そうにもない。おもむろに起ち…

そして、池上線22

西崎とも代からの電話は、いつも唐突で、何かと騒動モノだ。 それもようやく慣れた頃に独立をし、彼女との縁もついに終わりだな。 ふと脳裏をかすった時に、今回の思いもよらぬ初恋さがしの仕事。 独立し二年目、ようやく出版社運営に慣れたとはいえ、 何か…

そして、池上線21

『たまちぃ、たまち。』 少し間延びの、車掌の声を聞きながら、いつもの反対側、西口に向かおうと決めた。 当時、Mと共同暮らしの学生寮は山手線、田町駅の東側。 運河、埠頭がすぐ迫る倉庫街へと向かう場所にあり、 レコード店はおろか、当時コンビニの一軒…

「そして、池上線」連載20回記念!そして、池上線のあれやこれや

とある通勤の朝、IPODから流れる お気に入り『池上線』を聴きながら、 あ 。この歌を題材に、ひとつ物語りが書けるのでは? と、ひらめいたのだった。 だがナァ とも思う。 あまりにも 直球勝負の題材なのだ。 歌の世界で、すでに物語りとして完結してし…

そして、池上線20

「え?トッキュウ、イケガミセン・・・」 高野さんが、じゃあ五反田まで一緒だね、と言い そのあとの言葉が聞き取れず聞き直したのだった。 「ちがう、東急の池上線」 今、思い出せばなにか可笑しい。高野さんはムキになって説明した。 「聴いたことない?歌…

そして、池上線19

「バスケ、入部の初日で辞めた。んで伝説的な笑い者に」 「あー。思い出した。それ。片思いだった子に根性なして笑われ、バカにされたとか。 まさかそれ大学まで引っ張ってたん?」 「うん。まあ」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ そう、その頃の私…

そして、池上線18

ドキドキしながら、受付へと向かった。 頭の中では、なんと切り出すべきかあれこれ考え、やはり引き返そう とか、あ、いやいや、やはり返却期限のことも気がかりだ。と 自分を奮え立たせたりした。 だが え? 受付には高野さんの姿はなく、時おり見かける職…

そして、池上線17

(あら。今日は遅かったですね。授業の居残り?) 低いトーンの、けれど可愛い唇から発せられた声が 耳から離れない。 誰に対しても笑顔を見せるヒトだけれど、いつもは無口で 人に対して、気安く声をかけるタイプの人ではない。 いや、なかったと思う。そう…

そして、池上線16

「あら、今日は遅かったですね。授業の居残り?」 受付を通り過ぎる時だった。いきなり彼女が声をかけてきた。 大学構内にある図書館に通い始め、おおよそ2週間。 彼女とは、すっかり顔なじみになったとはいえ、 最初の事務的に交わした会話以外、まだなか…